よくわからないねじ

「俺、仕事も順調だしね、余裕も少しは出てきたし、ここらでひとつ、重量挙げでもはじめようと思うんだ」
 そんなふうに語りだす人に私はこれまで会ったことがない。おそらくそんなことを考える人物はこの先も現れないだろう。なぜなら、「余裕」と、「重量挙げ」は、どうにも結びつかないからだ。じゃあ、「ハンマー投げ」はどうか。どうかってことはないが。ともあれ、「経済的に余裕ができたからゴルフをはじめる」ことが凡庸なら、それに対して反発することもまた、凡庸な意識にちがいない。ゴルフについて考えること、そのこと自体、ひどく凡庸ではある。

よくわからないねじ (新潮文庫)

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